民事訴訟を起こされたら

 ある日あなたのもとに、突然『訴状』と呼ばれる訴えを提起する書面が届いたら・・・。
 ほとんどの方は、はじめてのことに驚いてしまい、どうすればよいか分からないのではないでしょうか。
 民事訴訟には独特なルールがあり、そのルールをしっかり理解していないと、適切な対応をとることができません。理解が不十分なために、適切な対応をとることができず、いつのまにか取り返しの付かない状態におちいってしまうこともあります。
 そこで、ここでは、民事訴訟を起こされた場合(訴えられて被告になった場合)の注意点を、できるだけ分かりやすく解説します。

1 『訴状』の読み方

 訴状には、さまざまな記載がありますが、まず注目すべきは、『請求の趣旨』という部分です。
 『請求の趣旨』は、原告(訴えを提起した一方当事者です。)が訴状によって主張している一定の権利又は法律関係についての結論に相当するものです。
 たとえば、貸金請求事件では、請求の趣旨として、「被告(訴えを提起された一方当事者です。)は、原告に対し、〇万円を支払え。」などと書かれます。
 ここをみれば、原告が、その民事訴訟で何を求めているのかが端的に分かります。

 次にあなたが見るべきは、『請求の原因』という部分です。
 ここには、主に、原告の請求を理由づける具体的な事実が記載されます。
 たとえば、「原告は、被告に対し、平成〇年〇月〇日、〇万円を、弁済期平成〇年〇月〇日、期限後の損害金年3割の約定で貸し付けた。その弁済期は経過した。」などといった内容が書かれます。
 ここをみれば、原告が、どのような具体的事実(出来事)を根拠として、訴えを提起したのかが分かるでしょう。

2 民事訴訟のルール

 ここで、民事訴訟のルールを簡単に説明します。
 まず、民事訴訟においては、原告の請求の趣旨に対して、被告がそれをそのまま正当と認めてしまうと、判決と同一の効力を生じ、訴訟は当然に終了します(民事訴訟法266条、267条)。
 したがって、被告としては、原告の請求に異議があるのであれば、まずは、請求を理由なしとして、請求の棄却(請求を理由なしとして退ける判決)を求めるという申立てをしておく必要があります。

 次に、民事訴訟においては、「当事者間に争いのない事実は、判決の資料として採用しなければならない」といったルールがあります。
 したがって、被告としては、原告が主張する事実について、どれを争い、どれを認めるかを慎重に判断しなければなりません。
 また、被告が原告主張の事実に対して何も認否せず、ただ沈黙している場合は、これを認めたとみなされてしまうので(民事訴訟法159条1項)、認否をする際は、原告が主張する事実ごとに明確に行う必要があります。

3 被告が最初にやるべきこと

 では、被告となったあなたは、どうやって、請求の棄却を求める申立てをしたり、原告が主張する事実について認否をしたりすればよいのでしょう。
 それは、『答弁書』によって行います。
 『答弁書』とは、被告が民事訴訟において主張しようとする事項を記載して裁判所に提出する最初の書面のことをいいます。
 まずは、この『答弁書』を作成して、裁判所に提出しましょう。

 なお、『答弁書』を提出しておけば、万が一、あなたが最初の民事訴訟の期日に欠席することになってしまった場合でも、裁判官は、『答弁書』に記載された事項を、あなたがその期日に裁判所で主張したものとみなしてくれます(民事訴訟法158条)。
 他方で、『答弁書』を提出していないときは、被告が原告の主張事実を認めたものとみなされてしまいます(民事訴訟法159条3項)。この場合は、直ちに原告の請求を認める判決がなされてしまうこともあるのです(民事訴訟法254条1項1号)。

4 以上、民事訴訟を起こされた場合(訴えられて被告になった場合)の注意点をできるだけ分かりやすく解説してみました。

 とはいえ、ここに書かれたことはひととおり理解できたとしても、実際に『答弁書』を作成してみようとすると、なかなか思い通りに進まないということもあるかと思います。

 テレビドラマや映画等の影響もあり、裁判では口頭で相手を論破した方が勝利するかのような誤解をされている方も少なくありません。しかし、現実の裁判実務は全く異なります。
 裁判所にあなたの主張を理解してもらい、適切な判断をしてもらうためには、やはり、できるだけ分かりやすく、現実の裁判実務の形式に沿った書面を作成することが不可欠です。
 民事訴訟を起こされ、ご不安を抱かれている方は、ぜひとも当事務所にご相談ください。

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