事業承継

中小企業の事業承継についてお悩みではありませんか

  • 中小企業を経営しているが、高齢となったため、子に事業を承継したい

 我が国に存在する企業のほとんどは中小企業です。しかし、近年は、経営者の高齢化傾向が顕著で、事業承継を円滑に推進するニーズが高まっています。
 そこで、ここでは、とくに親族に事業を承継する場合について概説します。

株式・事業用資産の分散防止の必要性

 一般的に、会社において、承継後の後継者が安定した経営基盤を確保するためには、自社株(議決権)の少なくとも半数、できれば3分の2を確保しなければなりません。また、不動産等の事業用資産の分散も避けたいところです。
 しかし、親族内承継において、先代経営者に複数人相続人がいる場合、何の準備もしていないと、相続によって先代経営者が保有していた自社株や事業用資産が分散してしまうことがあります。これは、後継者の経営基盤を危うくするばかりか、通常、遺産分割にはかなりの時間がかかるため、その間の経営の不安定化をもたらします。また、株主の相続等により株式が分散した場合、株主管理コストの上昇、株式買い取り請求による会社資金の流出という事態が生ずる可能性があります。

事前の対策

 親族内承継における事前の対策としては、①先代経営者の生前に自社株等の承継が実現する生前贈与、売買(いわば「生前実現型)、②その生前に準備をするが承継は死後に実現する遺言、死因贈与(いわば「生前準備型」)があります。

1 生前実現型

(1) 生前贈与

 先代経営者が後継者に自社株等を生前に贈与する方法であり、生前実現型の代表例です。

(メリット)
  1. 先代経営者と後継者の間だけで確実に自社株等の承継が実現します。
    つまり、形式的な瑕疵により無効になったり、先代経営者の遺言能力や具体的な意思内容等について疑義が生じたりすることを避けられ、また、遺言執行という手続きも必要ありません。
(デメリット)
  1. 特別受益(民法1044条、903条)として遺留分算定の基礎財産として減殺の対象となる可能性があります。
  2. 贈与税(相続税よりも高額)が課せられます。

(2) 売買

 生前贈与と異なり、後継者は売買代金を準備しなければなりません(先代経営者も、場合によっては譲渡所得税を負担することになります。)。
 ただ、代金額の設定については裁量の余地があるので、後継者が可能な範囲で自社株を購入することで、遺留分減殺請求の対象から外すことができます。

2 生前準備型

(1) 遺言

 先代経営者が、遺言により、自分の死後の自社株等の承継方法を指定する方法で、生前準備型の代表例です。

(メリット)
  1. 推定相続人の関与なしに秘密に作成することができます。
  2. いつでも撤回・変更ができます。
(デメリット)
  1. 遺留分減殺の対象となります。
  2. 遺言能力をめぐるトラブルが起こりやすいです(主に、自筆証書遺言の場合。公正証書遺言の場合であっても遺言能力が否定されて無効になった例があるので注意が必要です。)。

(2) 死因贈与

 効力は、概ね遺言と同じです。
 ただ、遺言のような厳格な形式は不要であること、自筆でも検認(民法1004条)が不要であることなどは異なります。

3 遺留分に関する民法の特例

(1) 概要

 上述した事前の対策により、いったんは自社株等を後継者に集中して承継させることができても、これらが特別受益に該当し、後継者以外の相続人(遺留分権利者)の遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求権を行使され、自社株等が分散してしまうというリスクがあります。
 また、生前贈与された自社株等が特別受益として遺留分算定の基礎財産に算入される場合、その価額は、贈与時ではなく相続開始時のものであり、その価額が増大した場合の受贈者(後継者)の寄与・貢献は考慮されません(判例)。
 そのため、贈与を受けた後継者の努力や才覚により自社株の価額が上昇した場合、かえって他の相続人の遺留分を増大させるというジレンマが生じ、後継者の経営意欲を削ぎかねないという問題があります。
 そこで、このような遺留分の問題に対応し、円滑な事業承継に資するため、平成20年5月に創設されたのが経営承継円滑化法の民法の特例(以下「民法特例」といいます。)です。
 民法特例は、以下で説明する「除外合意」や「固定合意」(以下、合わせて「除外合意等」といいます。)により、遺留分減殺請求による自社株等の分散防止や、後継者の努力による自社株の価値上昇分の保持等を可能にしています。

(2) 効果(経営承継円滑化法9条)

ア 除外合意

 非後継者と後継者は、対象自社株の価額を遺留分算定の基礎となる財産の価額から除外する旨の合意をすることができます(経営承継円滑化法4条1項1号)。
 この場合、対象自社株が遺留分減殺の対象からも除かれる(判例)ので、後継者が生前贈与等により取得した自社株等の分散を防止することができるほか、後継者は自らの才覚等による自社株等の価値増加分を保持することができます。

イ 固定合意

 非後継者と後継者は、対象自社株の遺留分算定の基礎財産への算入価額を、当該合意時の時価(ただし、弁護士、公認会計士、税理士等によって「相当な価額」として証明されたものに限る)とする(固定する)旨の合意をすることができます(経営承継円滑化法4条1項2号)。
 この場合、対象自社株の遺留分算定の基礎財産への算入価額が当該合意時の時価に固定されるので、後継者は、自身の才覚等により対象会社の業績が上がり、自社株の価額が上昇した場合でも、その増加分を保持することができます。

ウ 非後継者がとりうる措置の定め

 除外合意等に加え、後継者が対象自社株を他に処分した場合または先代経営者の生存中に代表者を退任した場合について、非後継者がとりうる措置(合意の解除、制裁金など)の定め(経営承継円滑化法4条3項)をすることもできます。

エ オプション合意

 除外合意等に附帯して、以下のオプション合意も可能です。

  • 自社株以外の財産(事業用の不動産等)についての除外合意(経営承継円滑化法5条。固定合意は不可。)。
  • 除外合意等について非後継者への代償措置に関する合意(後継者の非後継者に対する金銭支払や後継者が先代経営者の生活費等を負担すること等。)。特に、非後継者が代償として先代経営者からの贈与等によって取得した財産(これも「特別受益」になる)に関する除外合意も可(経営承継円滑化法6条2項。固定合意は不可。)。

(3) 適用要件

 以下の要件を満たす対象会社の先代経営者の推定相続人全員(非後継者)と、後継者が、書面により、「除外合意」または「固定合意」及び「非後継者がとりうる措置の定め」をしなければなりません。

ア 対象会社

 ①下記の図表のとおり、業種ごとに、資本金または従業員数のいずれかの要件を満たし、②3年以上事業を継続する、③非上場会社であること(経営承継円滑化法では「特例中小企業者」。同法3条1項、同法施行規則2条)。

業種 資本金 従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
  ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く) 900人以下
卸売業 1億円以下 100人以上
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 100人以下
  旅館業 200人以下
  ソフトウェア・情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
イ 先代経営者

 ①対象会社の代表者であった者(現代表者も含む)で、②自社株(完全無議決権株式を除く)を他人に贈与したことがある者であること(経営承継円滑化法では「旧代表者」。同法3条2項)。

ウ 後継者

 ①自社株を先代経営者から贈与を受けた者(特定受贈者)またはその者から相続、遺贈、贈与により取得した者で、②対象会社の総株式(完全無議決権株式を除く)の議決権の過半数を保有し、③対象会社の代表者であること(経営承継円滑化法)では「後継者」。同法3条3項)。

エ 対象自社株

 ①先代経営者からの生前贈与またはその生前贈与を受けた者からの贈与、遺贈、相続により取得したもの(回数に制限はない)で、②後継者が保有する自社株から①により取得した自社株を除くと対象会社の議決権の半数以下であること(経営承継円滑化法4条1項)。

(4) 適用手続

 除外合意等が効力を生じるためには、後継者が、①経済産業大臣の確認と②家庭裁判所(先代経営者の住所地を管轄する家庭裁判所。家事事件手続法243条)の許可を受けることが必要です。

弁護士費用について

2 契約書類及びこれに準ずる書類の作成

定型

経済的利益の額が1000万円未満のもの 5万円から10万円の範囲内の額
経済的利益の額が1000万円以上1億円未満のもの 10万円から30万円の範囲内の額
経済的利益の額が1億円以上のもの 30万円~

非定型

基本 経済的な利益の額が300万円以下の場合 10万円
300万円を超え3000万円以下の場合 1%+7万円
3000万円を超え3億円以下の場合 0.3%+28万円
3億円を超える場合 0.1%+88万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額
公正証書にする場合 上記の手数料に3万円を加算する

4 遺言書作成

定型

 10万円から20万円の範囲内の額

非定型

基本 経済的な利益の額が300万円以下の場合 20万円
300万円を超え3000万円以下の場合 1%+17万円
3000万円を超え3億円以下の場合 0.3%+38万円
3億円を超える場合 0.1%+98万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と依頼者との協議により定める額

公正証書にする場合

 上記の手数料に3万円を加算する

5 遺言執行

基本 経済的な利益の額が300万円以下の場合 30万円
300万円を超え3000万円以下の場合 2%+24万円
3000万円を超え3億円以下の場合 1%+54万円
3億円を超える場合 0.5%+204万円
特に複雑又は特殊な事情がある場合 弁護士と受遺者との協議により定める額
遺言執行に裁判手続を要する場合 遺言執行手数料とは別に、裁判手続に要する弁護士報酬を請求できる。

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